シーリング:ceiling is defined as the height above the Earth’s surface

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、気象に関する問題です。

 

例題

  1. PLT026 PVT

For aviation purposes, ceiling is defined as the height above the Earth’s surface of the

A) lowest reported obscuration and the highest layer of clouds reported as overcast.

B) lowest broken or overcast layer or vertical visibility into an obscuration.

C) lowest layer of clouds reported as scattered, broken, or thin.

 

日本語訳

113.  PLT026b PVT

航空気象における、シーリングの定義は地表面から何処までの高さをいうか

A) 報告された一番低い”天空不明層”および最も高い”オーバーキャスト”と報告された雲の層までをいう

B) 最も低い”ブロークン”または”オーバーキャスト”層まで。”天空不明”の場合は、垂直視程

C)”スキャタード”ブロークン””薄雲”と報告された最も低い層まで

 

解答

B) 最も低い”ブロークン”または”オーバーキャスト”層まで。”天空不明”の場合は、垂直視程

 

解説

シーリングとは『天井』のことですが、航空気象では次のように定義されています。

 

Ceiling
For aviation purposes, a ceiling is the lowest layer of clouds reported as being broken or overcast, or the vertical visibility into an obscuration like fog or haze.

Clouds are reported as broken when five-eighths to seven-eighths of the sky is covered with clouds. Overcast means the entire sky is covered with clouds.

Current ceiling information is reported by the aviation routine weather report (METAR) and automated weather stations of various types.

シーリング
航空の目的において、シーリングは一番低い層の雲でブロークンまたはオーバーキャストと報告されたものの地表から雲梯までの垂直距離、あるいは霧や煙霧などによって天空が遮蔽されている場合は、垂直視程で表されます。

雲が全天の5/8から7/8を覆った場合、ブロークンと報告されます。オーバーキャストとは全天が雲で覆われた状態を意味します。

現在のシーリング情報は、定時航空気象実況通報式(METAR)や各種の自動気象観測局によってレポートされます。

 

まとめ

シーリングは雲量5/8(ファイブ・オクタス)以上の地表から雲底までの垂直距離を言います。(Layer Aloft Ceiling)

天空が霧などによって遮蔽されている場合は、垂直視程でシーリングを表します。(Indefinite Ceiling)

下図を参考にしてください。

Figure 16-6. Layer Aloft Ceiling Versus Indefinite Ceiling

Figure 16-6. Layer Aloft Ceiling Versus Indefinite Ceiling

 

スピンの条件:Flight condition must an aircraft be placed in order to spin

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、固定翼機のスピンに関する問題です。

例題

6.PLT245 PVT

In what flight condition must an aircraft be placed in order to spin?

A) Partially stalled with one wing low.
B) In a steep diving spiral.
C) Stalled.

 

日本語訳

6.  PLT245c PVT

飛行機がスピンを起こすためにはどのような条件が必要か

A) 片方の主翼が下がっている状態で部分的に失速していること
B) 急角度の螺旋降下を行っていること
C) 失速していること

 

解答

C) 失速していること

 

解説

スピンとスパイラル・ダイブの違い
スピンは主翼の片方が、反対側の主翼よりも大きく失速している場合、左右の主翼の間に揚力と抗力の差が生じることにより、失速の度合いが大きい側(揚力小・抗力大)の主翼を旋転の中心側として低速で旋転を繰り返し、高度を失っていく現象。

スパイラル・ダイブは、高度を処理するときなど故意に行う場合と、夜間や雲中など水平の目印となるものがないときに予期せずに陥る場合があるが、後者は、何らかの外力により機体が傾いたときに、パイロットが傾きに気付かず、その結果、高度が下がるのをエレベーターを引くことで修正しようとした場合、さらにバンク角が増加し高度を失うため、さらにエレベーターを引く悪循環に陥り、急激に高度を失っていく。

スピンとスパイラル・ダイブは旋転(旋回)しながら高度を失っていくので、一見同じ現象のようですが大きな違いがあり、それは速度です。

スピンは低速度で発生し、スピン中もほぼ一定の速度を維持します。それに対してスパイラル・ダイブは、速度がどんどん大きくなっていく特徴があります。

4-12

4-12

 

リカバリー方法
スパイラル・ダイブは、主翼の傾きが原因なので、まずエルロンで水平に修正するとともに、速度増加を抑えるためにパワーをアイドルにします。その後、エレベーターを引いて水平飛行に戻ります。

スピンは、主翼が失速しているためエルロンで傾きを直すことが出来ません。パワーをアイドル、エルロンを中立、ラダーを旋転の反対方向にフルに踏み旋転を止め、旋転が止まったらエレベータを押すことで、主翼の迎え角を減らし、主翼の失速を回復させます。その後、エレベーターを引き水平飛行に戻します。

 

結論

スピンは必ず主翼の失速を伴います。また、失速は主翼全体がいっぺんに失速するのではなく、主翼の後縁から前縁へと徐々に失速が波及するため左右の主翼で失速の度合いが違うことが起こりえます。このことで左右の主翼の揚力と抗力の差が発生しスピンの原因となります。

 

FAA発行・パイロットハンドブック#5 航空力学・ 日本語訳 (練習問題CD付)

201611

飛行訓練生のバイブルを完全日本語化

米国連邦航空局が発行した飛行訓練生のための公式参考書を日本語化しました。 53ページの図解豊富な冊子に、英文原本+練習問題を収録したCDが付属しています。

パイロットハンドブックは、17のチャプターに分かれています。この冊子は チャプター5(航空力学)について詳しく解説をしています。

アメリカでは100人に1人がパイロットライセンスを所持していると言われています。 飛行機を操縦するということは特別なことではなく、正しい教育を受ければ誰もが実現可能な 夢なのです。

アメリカの飛行訓練用教材は、誰でもわかりやすく勉強が出来るようによく考えられて作成されています。 難しい数式は最低限に、カラー図解を多用しています。

この本はFAA(連邦航空局)が編集・発行をしています。自家用操縦士の国家試験は、全てこの中から、 出題されます。(学科試験・実技口頭試問)


テキストの内容

1.航空機に作用する力
2.翼端渦
3.地面効果
4.航空機の軸
5.モーメントとアーム
6.航空機の設計上の性格
7.主翼の平面形状による影響
8.飛行運動における空気力学
9.失速
10.迎え角指示器
11.プロペラの基本的原理
12.荷重倍数
13.重量・重心
14.高速飛行

2016年の改定から、AOA(迎え角)指示器についての項目が増えました。不用意に臨界迎え角を超えて 操縦不能になる事故は、多くが死亡事故につながるため、パイロットとして事前に知っておくべき事項です。


付属CDの内容

  1.PILOT’S HANDBOOK CHAPTER 5 AERODYNAMICS(原本)
2.練習問題・解説

この教材を使用するときのアドバイスとして、最初に日本語版テキストで内容を理解したら、付属CDの 原本と照らし合わせて、英文で理解できるように頑張りましょう。

一度頭の中で理解していますから、英文も理解しやすい と思います。これは、実技口頭試験(オーラル)対策でもあります。

 

夢を実現するための第一歩として、この教材をお役立ていただければ幸いです。また、メールによるサポートも しております。ご不明な点は筆者に遠慮なくお尋ねください。

飛行機の失速速度:The Indicated Airspeed at which a given Airplane Stalls

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、固定翼機の失速速度に関する問題です。

例題

7.PLT477 PVT

As altitude increases, the indicated airspeed at which a given airplane stalls in a particular configuration will

A) decrease as the true airspeed decreases.
B) decrease as the true airspeed increases.
C) remain the same regardless of altitude.

 

日本語訳

7.  PLT477c PVT

ある飛行機の、所定の形態における失速時の指示対気速度は、高度が増加するにしたがって、

A) 真対気速度が減少するため減少する
B) 真対気速度が増加するため減少する
C) 高度に関係なく一定である

 

解答

C) 高度に関係なく一定である

 

予備知識

所定の形態(Particular Configuration):飛行機のフラップやランディング・ギアおよび機体重量を予め決めた状態にすること。Clean Configurationは、フラップやランディング・ギアを格納して抵抗を一番小さくした状態、またLanding Configurationは、フラップやランディング・ギアを展開した状態をいう。(Dirty Configuration)

 

指示対気速度(Indicated Air-Speed, IAS):ピトー・スタティック式(動・静圧式)速度計において、計器が指示した値を直接読み取った数値のこと。

 

較正対気速度(Calibrated Air-Speed, CAS):指示対気速度から位置誤差および機械誤差を補正した速度。位置誤差は、ピトー氏管自体の取付角度のずれや航空機の姿勢変化による相対風が動圧孔に正対しないことで発生する。機械誤差は、指針と目盛のずれや伝達ギヤの遊び等、機械部分が原因で発生する。

 

真対気速度(True Air-Speed, TAS):較正対気速度を高度と標準以外の温度で補正した速度。同じ指示対気速度で飛行しても、高度が大きくなるほど、温度が高くなるほど真対気速度は大きくなる。静穏な大気中では実際の対地速度と同じになる。

 

 

解説

飛行機は、どのような速度、姿勢においても失速を起こすことが可能です。一般に、航空機の速度が小さくなると失速を起こすように思われますが、速度と失速には直接的な関係はありません。

失速は、主翼の迎え角がある程度以上になると、『必ず』起こります。一般的な翼型においてその角度は16-20°で、この迎え角を『臨界迎え角』と呼んでいます。

問題にある、『所定の形態』とは、飛行機に装備しているフラップやランディング・ギヤが、格納された状態なのか、展開された状態なのかという飛行形態のことで、例えば着陸形態は、フル・フラップ、ギヤ・ダウンした状態を表します。

上記の着陸形態で水平飛行を行い、パワーをアイドル状態にし、高度が下がらないようにエレベーターを引いていくと、航空機の速度計の指示は、どんどん下がっていき、ある指示対気速度(VS0)になると、航空機は失速します。これは、ある速度まで低下したから失速したのではなく、高度を維持しようとエレベーターを引いていった結果、臨界迎え角に達したので失速したということです。

1-16

1-16

失速を起こした時の対気速度計指示(VS0)は、海面上でも、海抜6,000フィートにある高地の飛行場でも同じ速度です。その理由は、対気速度計の構造にあります。

対気速度計は、ピトー管の動圧とスタティック・ポートの静圧の対比を指針の動きに変えて速度表示するようになっています。海面上に比べ、海抜6,000フィートでは、気圧が低くなるので、ピトー管に入る圧力も低くなります。しかし、同時にスタティック・ポートの静圧も低くなるため、その割合は周辺気圧に関係なく一定です。

従って、ある一定条件下で失速するときの指示対気速度は、高度に関係なく一定であるといえます。ただし当然ながら、条件を変えれば失速時の対気速度は変化します。

最初に書いたように、飛行機はいかなる速度、姿勢においても失速することが可能です。例えば、100ノットで巡航中でも、エレベーターを急激に引いて、臨界迎え角を故意にオーバーさせれば、飛行機は失速してしまいます。(飛行機の構造部が耐えることが出来れば)また、急旋回中、速度が比較的高いのに失速し、スピンに入ってしまうこともあります。これは、急旋回で荷重倍数が増加し、増加分の揚力を作るためエレベーターを引くと、臨界迎え角に達してしまうためです。

まとめ

失速は、迎え角が一定以上になると必ず起こります。高度が変化しても、ピトー管・静圧孔ベースの速度である指示対気速度は変化しません。

 

 

自動方向探知機その2:Automatic Direction Finder

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、ADFに関する問題その2です。

例題

  1. PLT014 PVT

(Refer to figure 30, illustration 2.) Determine the approximate heading to intercept the 180° bearing TO the station.

fig30_02

fig30_02

A)  040°
B)  160°
C)  220°

 

 

 

 

日本語訳

69.  PLT014c PVT

(図 30, イラスト 2.) NDB局へ向かう 磁針方位180°のコースにインターセプト(合流)する場合、航空機はどの針路を維持すればよいか

 

解答

C) 220°

 

解説

はじめに、図30のADF指示器は、アジマス(方位目盛)が可動式のもので、前回の問題の固定式カード(ゼロが真上に固定されているタイプ)ではないので注意してください。可動式目盛は、(SET)ノブを回して、真上の▼印にコンパスの指示を合わせます。(MH315)

すると、ADF指示器の指針が示している数字(190)が局への方位(MB)となるので、公式(MB=RB+MH)で計算しなくてもMBがすぐに判明します。

そのような訳で、図30から航空機の磁針路は、315と仮定します。

 

次に、インターセプトという言葉についてお話しします。
インターセプトは、合流するという意味ですが、これはNDB、あるいはVOR局へ向かうコース(TO the Station)と局から離れていくコース(FROM the Station)に対して航空機が合流するということで、コースに対して合流する角度をインターセプト角といいます。

問題の180(TO)のコースは、局へ向かう磁方位180°という意味なので、航空機は局へ向かうコースにインターセプトするという前提です。

intercepting to 180 TO

intercepting to 180 TO

インターセプトする角度は、コースに対して90°以下でなければなりません。そうでないと、航空機はインターセプトするまでの間、局に対して遠ざかってしまうからです。

180(TO)のコースの場合、インターセプト角の範囲は090°から270°です。
従って、(A)の040°は範囲外なので不正解です。

(B)の160°の場合、180°(TO)のコースに対し20°の角度をもってインターセプトすることになり、問題ありません。

また、(C)の220°の場合も、コースに対し40°のインターセプト角なので、これも問題ありません。

答えは(B)または(C)となりますが、正解は航空機が180(TO)のコースに対して東側にいるか、西側にいるかによって変わってきます。
自機がコースに対して東側にいるときは、(C)の220°、西側にいるときは(B)の160°が正解となります。

そこで、図30の2の計器の指示を読み取り、コースに対しての自機の位置を調べる必要があります。結論から言うと、現在位置からのMB(局への方位)を調べると、コースに対してどちら側にいるかが分かります。

可動式カードの場合は、指針の指示がMBなので、局への磁方位は(MB to the Station)190となります。

MB190ということは、別の言葉でいうと、自機は現在、190(TO)のコース上にいるということです。よって、自機は、180(TO)のコースに対して10°分左側(東側)のコースにいるということになります。

 

ここからは、おまけになりますが、インターセプトする角度が大きいほど、コースに対して素早く合流することが出来ます。従って、自機から局への距離が短い場合にインターセプト角を大きく取りますが、ADF指示器の指針の振れが急になるので(レートが高くなる)オーバーシュートしやすくなり、合流の操作が難しくなります。

逆に、インターセプトする角度が小さくなるほど、合流に時間が掛かりますが、指針の振れが穏やかなので、合流の操作が簡単です。

実際の操作では、初期は60°くらいの角度でインターセプトを行い、コースに近づくにつれ、45°、30°とインターセプト角を減らしていきます。そうすると、とてもスムーズにコースへの合流が可能です。これはVORでインターセプトを行う場合も同様です。

最後に、ADFは局への方位を指針が指してくれるので、VORよりも簡単に使えると思いがちですが、実際は上記の公式を使ってMBを求め、風向を考慮してWCAを考慮した針路を計算するなど、VORに比べて使いにくい計器です。

現在は、NDB局も激減しADFは活用する機会が減ってきています。
学科試験問題も、VOR、RNAV、GPSが多くなってきています。

 

気化器凍結:Carburetor Icing

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、航空工学の問題です。

例題

26. PLT136 PVT
With regard to carburetor ice, float-type carburetor systems in comparison to fuel injection systems are generally considered to be

A) more susceptible to icing.
B) equally susceptible to icing.
C) susceptible to icing only when visible moisture is present.

日本語訳

26.  PLT136a PVT

気化器凍結に関して、フロート式キャブレータ装置を燃料噴射装置と比較した場合、一般的に考えられることは、

A) アイシングを起こしやすい
B) 起こりやすさは変わらない
C) 空気中に目に見える水分が存在する場合は起こしやすい

解答

A) アイシングを起こしやすい

解説

レシプロ航空エンジンの燃料供給装置には、従来のキャブレーター(気化器)式とインジェクション(燃料噴射装置)式があります。

大きな違いは燃料を噴射する場所で、キャブレーター式は気化器内部のベンチュリ―付近(図7-10)から負圧で吸引されるのに対し、インジェクション方式では、シリンダーヘッドの吸気ポートに直接噴射が行われています。

7-10

7-10

キャブレーター・アイシング(気化器凍結)は、ベンチュリ―やスロットルバルブ部分が凍結し、混合気がエンジンに供給されにくくなる現象で、エンジンの回転数低下から始まって、振動、パワー低下、エンジン不調、最終的にはエンストにつながるため、操縦席のキャブ・ヒートレバーを引いて排気マニホールドの輻射熱を導入することにより、吸入空気の温度を上げて凍結を防止しています。

キャブレーター・アイシングが発生し易い条件は、

・外気温度70°F(21℃)以下
・相対湿度80%以上

これは、雨や霧などの目に見える水分がある状態でなくても、外気温度が氷点下でなくても発生することを意味します。極端なケースでは、外気温度38°C、相対湿度50パーセントで発生することもあり得ます。

7-11

7-11

気化器内部のベンチュリ―とスロットル・バルブ付近では、ベンチュリ―出口で減圧されたことによる温度低下と、ガソリンが気化するときに熱を奪うことにより、外気温に対して70°F(38°C)低下します。

インジェクション方式(コンチネンタル型)の場合

燃料噴射式の場合は、以下の6つのコンポーネントによって構成されています。

・エンジンによって作動する燃料ポンプ
・燃料/空気コントロール・ユニット
・燃料分配装置
・噴射ノズル
・予備燃料ポンプ(電動)
・燃料圧力/流量指示器

予備燃料ポンプは、エンジン始動前に燃料/空気コントロールユニットに燃圧を掛ける役目をします。

燃料/空気コントロール・ユニットはもともとキャブレーターのあった場所にスロットル・ボディーと呼ばれる空気の流量を制御するスロットル・バルブおよびベンチュリ―を内蔵した装置と、燃料の流量を制御するフューエル・コントロール・ユニットが装備され、操縦席のスロットル・ノブを操作するとスロットル・バルブおよびフューエル・コントロール・ユニットがケーブルやリンクで連動する仕組みになっています。これにより、スロットル開度に応じた空気と燃料の流量を制御することが出来ます。

7-13

7-13

フューエル・コントロール・ユニットで制御された燃料は、燃料分配装置(フューエル・マニホールド・バルブ)を通り、各シリンダーごとに装備された噴射ノズルに供給されます。ノズルは燃料をシリンダーヘッドのインテーク・ポートに噴射し、ここで初めて空気と燃料の混合気が生成されます。

キャブレーター式の場合、エンジン下部にインレット・マニホールドを介して取り付けられたキャブレーター内、つまりエンジンの熱が届きにくく減圧された環境下で混合気がつくられるのに対して、インジェクション式の場合は、エンジン付近の暖かい場所で混合気がつくられるためガソリンの気化が促進されるとともに、気化によるアイシングの発生が抑えられています。インジェクション式、特に過給機を装備したエンジンは気化によるアイシングはほとんど発生することはありません。ただし、空気取り入れ口やスロットル・バルブ付近のアイシングは気象条件によっては発生することがあります。

インジェクション式のメリットは、

気化によるアイシングが発生しにくい
・燃料の流れが良い(配管が加圧されているため)
・スロットルの追従性が良い(燃焼室近くで燃料噴射が行われるため)
・燃料の分配が良い(各シリンダーごとに噴射ノズルがあるため)
・冷間時の始動性が良い(燃焼室近くで混合気が生成されるため)

インジェクション式のデメリットは、

・暖気状態で再始動性がわるい
・地上運用や酷暑時にべーパー・ロックしやすい(熱で配管内の燃料が気化し噴射できなくなる)
・燃料切れでエンストした時に再始動が困難

まとめ

気化器凍結の原因は3つあります。一つ目は燃料が気化するときに温度が下がり発生するもの、二つ目は、スロットル・バルブの開きが少ないときに、通過した空気または混合気がベンチュリ―効果で減圧することで温度が下がり発生するもの、三つめは、空気中に可視水分(雨粒や霧など)があり、翼の着氷と同様に-10℃から0℃の過冷却水滴が空気取り入れ口に衝突することで発生するもので、この設問で質問されているキャブレーター・アイシングは、一つ目の燃料気化によるものです。ですから、インジェクション式の吸気系統が全く凍結を起こさない訳ではありません。あくまでもキャブレーター式とインジェクション式を比較した場合、どちらが燃料の気化によるアイシングを起こしやすいかという質問ですので誤解しないようにしてください。

キャブアイス発生の兆候は、固定ピッチプロペラ装備機では回転数の低下、コンスタント・ピッチ・プロペラ装備機では吸気管圧力の低下でわかります。OAT(外気温度)をモニターし、必要に応じてキャブヒートを作動させましょう。キャブヒートは発生した氷を溶かすという使い方ではなく、予防的に使用してアイシングを起こさせないようにするのが効果的です。

降下中などエンジンの出力を絞った状態で運用中は、キャブレーター・アイシングが発生しやすいので、キャブヒートを使用し、必要に応じて出力を上げる操作を行いアイシング対策を取ってください。

以上

飛行機のピッチング:The Longitudinal Stability of an Airplane

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

今回は、固定翼機の安定性に関する問題です。

例題

5. PLT213 PVT

What determines the longitudinal stability of an airplane?

A) The location of the CG with respect to the center of lift.
B) The effectiveness of the horizontal stabilizer, rudder, and rudder trim tab.
C) The relationship of thrust and lift to weight and drag.

 

日本語訳

5.  PLT213a PVT

飛行機の縦方向の安定性は何によって決まるか
A) 揚力(風圧)中心に対する重心の位置
B) 水平安定板、方向舵、方向舵のトリムタブの効き具合
C) 推力と揚力の重量と抗力に対する関係

 

解答

A) 揚力(風圧)中心に対する重心の位置

 

解説

多くの飛行機の風圧中心は、飛行機の重心よりも後方の範囲に位置するように設計されていて、揚力が大きくなるほど機首が下がる方向にモーメントが働くようになっています。

同時に、水平安定板には主翼からのダウンウォッシュ(吹きおろし)が働き、飛行機の尾部を下げる力が働きます。低翼機やTテールの飛行機は、水平安定板の取り付け角をマイナスにして対応しています。(図5-23)

 

5-23

5-23

これにより、水平飛行中は重心によって機首を下げようとする力と、水平安定板によって尾部を下げようとする力が釣り合って天秤のように安定しています。

いま、飛行機の機首が外力で持ち上がった時、迎え角が大きくなり揚力が増加しますが、重心が風圧中心よりも前にあるため機首下げモーメントが発生して機首が下がります。

逆に重心位置が風圧中心の後方に位置していると、機首が外力により持ち上がった時、迎え角が大きくなり主翼の揚力が増加するため、機首をさらに持ち上げようとするモーメントが働きます。

したがって、重心位置と風圧中心(Center of Lift)の位置関係が、飛行機のピッチ安定に大きな影響を及ぼすと言えるのです。

 

飛行機の安定性とは

飛行機が釣り合いの取れた状態を邪魔するような力を受けた時、姿勢を元の状態に戻し最初の釣り合いが取れた状態に戻って飛行を続ける能力。

 

安定性の種類

静安定(Static Stability)

5-21

5-21

正の静安定  力を受けたときに元の状態に戻ろうとする。(上図左)
中立の静安定 力を受けたときに変化した状態を維持する。(上図中)
負の静安定 力を受けたとき元の状態から更に離れていく。(上図右)

 

動安定(Dynamic Stability)

正の動安定   振幅が減衰する
中立の動安定  振幅が変化しない
負の動安定   振幅が増大する

 

 

5-18

5-18

縦安定(Longitudinal Stability)
ピッチ軸(Lateral Axis)まわりの安定性のことで、重心位置に対する水平尾翼の位置、水平尾翼の面積などが影響を与える。

横安定(Lateral Stability)
ロール軸(Longitudinal Axis)まわりの安定性のことで、主翼の上反角、後退角、および主翼の取り付け位置(キール効果:重心に対して主翼が上にあるか下にあるか)が影響を与える。

方向安定(Vertical Stability) 
ヨー軸(Vertical Axis )まわりの安定性のことで、重心より後ろの胴体側面積・垂直尾翼の位置および面積が影響を与える。

 

まとめ

一般的な飛行機が水平飛行中は、正の静安定かつ正の動安定の性格を持たせています。これは、トリムを取ってあれば、手放しで飛行が出来ることを意味します。

練習機としてポピュラーなセスナ152は、旋回時の横安定においては、少ないバンク角では正の静安定、一定のバンク角では中立の静安定、それよりバンク角が増加すると負の静安定になっています。このため、あるバンク角までは飛行機が自分で復元しようとしますが、バンク角が増加するほど復元力は低下し、最後には反対にエルロンを当てないとバンク角を維持することが出来なくなります。

今回は縦安定に焦点を当てましたが、横安定や方向安定についても調べておきましょう。

 

燃料のグレード:The Grade of Fuel Used in an Aircraft Engine

ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。

 

今回は、航空工学の問題です。

 

例題

58. PLT250 PVT

If the grade of fuel used in an aircraft engine is lower than specified for the engine, it will most likely cause

A. a mixture of fuel and air that is not uniform in all cylinders.
B. lower cylinder head temperatures.
C. detonation.

 

日本語訳

58. PLT250c PVT

航空機のエンジンに使用する燃料のグレードが、そのエンジンに指定されているものよりも低いグレードを使用した場合、最も考えられることは?

A. 燃料と空気の空燃比がすべてのシリンダーで均一にならない
B. シリンダヘッド温度が低くなる
C. デトネーション

 

解答

C. デトネーション

 

解説

航空ガソリンの種類

7-32

7-32

現在、一般に利用可能な航空ガソリン(AVGAS)は上図の3種類です。(一番右はジェット燃料)最も使用されているのは100LLで、青色に着色されています。80や100の数字はオクタン価あるいはパフォーマンス・ナンバーといい、高いほどアンチノック性が高いことを示しています。

 

オクタン価・パフォーマンスナンバー
オクタン価とはアンチノック性を示す数字です。100を超える場合は、パフォーマンスナンバーと呼んでいます。一般に、エンジンの圧縮比を高くしていくと、エンジンの出力は大きくなっていきますが、ノッキングが起こりやすくなります。ノッキングが発生すると、パワーが出なくなるばかりか、オーバーヒートを起こしたり、エンジンにダメージを与えたりします。そこで、圧縮比の高いエンジンには、ガソリンにノッキング防止剤を添加することにより、オクタン価を高くしてノッキングが発生し難くしています。

ノッキング防止剤
航空用ガソリンには、4エチル鉛をノッキング防止剤として使用しています。いわゆる有鉛ガソリンで毒性が強く、皮膚に付着させたり、吸引したりすることを避けてください。

 

ノッキング
ノッキングが発生すると、エンジンに異音が発生し、出力が低下し、エンジン温度が上昇します。ノッキングの発生原因には大きく分けて2つあります。

プレイグニッション:エンジンの燃焼室にホット・スポット(熱源)があり、スパーク・プラグによる通常点火の前に混合ガスに点火してしまう現象。ホット・スポットの原因としては、燃焼室内に蓄積されたカーボンやスパークプラグの熱価が低い(熱の放散が悪い)などがあります。正常時、エンジンのピストンが上死点(TDC)になる手前で点火が行われるのが一般的ですが、ホット・スポットによる点火が正常時のはるか手前で起こると、ピストンが上昇するのを抑える方向で燃焼が行われるため、ピストンを燃焼ガスが叩き、カラカラ音が発生します。

7-21

7-21

 

デトネーション:通常の燃焼は、点火後、渦を巻くように徐々に燃焼・膨張して、ピストンを押し下げる力となりますが、たとえば、シリンダーの圧縮圧力が高すぎると、燃焼が正常に行われず、燃料の粒が煤のようにくすぶった状態になります。そして、ある時点ですべての燃料の粒が瞬間的、爆発的に燃焼します。その場合、ピストンを押し下げるのではなく、ピストンを叩くように力が加わって、カラカラ音が発生します。(図7-21)ピストンを押し下げるための力に変えられなかったエネルギーは、余分な熱としてエンジンをオーバーヒートさせることになります。

 

 

 

デトネーションを防止するには

その航空機エンジンに適合したグレードのガソリンを使用する。
・地上にいるときは、カウル・フラップを全開にしてエンジン温度を下げる。
・ミクスチャーをリッチ寄りに調整し、上昇率を小さくする。
・高出力状態を長時間維持しない。上昇率を大きくしない。
・エンジン計器を監視して許容範囲になっていることを常にチェックする。

 

まとめ

航空ガソリンのグレードは、燃料注入口付近に記載されているので、指定されたグレードのものを使用する。

指定されたグレードが利用できないときは、一つ上のグレードを使用する。

飛行前点検で、燃料タンクからガソリンを抜き取るときは、皮膚に付着しないように注意し、捨てるときは蒸気を吸引しないように気を付ける。

デトネーションはエンジンがオーバーヒート状態でも発生する。油温計、シリンダヘッド温度計で常時モニターする。

現在AVGAS80(赤)および100(緑)は、一部の地域を除きAVGAS100LL(Low Lead:低鉛)に移行している。

 

FAA発行・パイロットハンドブック#16 航法・ 日本語訳 (練習問題CD付)

201610
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201610

飛行訓練生のバイブルを完全日本語化

米国連邦航空局が発行した飛行訓練生のための公式参考書を日本語化しました。 36ページの図解豊富な冊子と練習問題+資料集CDが付属しています。

小冊子イメージ1

 

 

 

 

 

 

 

パイロットハンドブックは、17のチャプターに分かれています。この冊子はチャプター16(航法)について詳しく解説 をしています。

アメリカでは100人に1人がパイロットライセンスを所持していると言われています。 飛行機を操縦するということは特別なことではなく、正しい教育を受ければ誰もが実現可能な 夢なのです。

アメリカの飛行訓練用教材は、誰でもわかりやすく勉強が出来るようによく考えられて作成されています。 難しい数式は最低限に、カラー図解を多用しています。

この本はFAA(連邦航空局)が編集・発行をしています。自家用操縦士の国家試験は、全てこの中から、 出題されます。(学科試験・実技口頭試問)

 

小冊子イメージ2

 

 

 

 

 

 


テキストの内容

  1.航空図について
2.緯度・経度・タイムゾーン
3.方位・針路
4.風の影響
5.距離・時間・速度・燃料消費の計算
6.地文航法・推測航法
7.風力三角形の作図
8.航法計画・フライトログの作成
9.フライトプランのファイル、オープン
10.VFR無線航法(VOR)
11.VFR無線航法(ADF)
12.VFR無線航法(VOR/DME RNAV)
13.VFR無線航法(GPS)
14.ロストポジション・緊急操作
15.迂回飛行・代替飛行場の選択

2016年の改定から、VFR無線航法にかなりの重点が置かれるようになりました。特にGPSは 近年、著しい発達を遂げていますが、それに伴いトラブルも多くなっています。汎用GPSと航空機用GPS の違いも詳しく説明しています。

CDイメージ1

 

 

 

 

 

 

 

 


付属CDの内容

1.PILOT’S HANDBOOK CHAPTER 16 NAVIGATION(原本)
2.練習問題・解説
3.図表・資料集

この教材を使用するときのアドバイスとして、最初に日本語版テキストで内容を理解したら、付属CDの 原本と照らし合わせて、英文で理解できるように頑張りましょう。

一度頭の中で理解していますから、英文も理解しやすい と思います。これは、実技口頭試験(オーラル)対策でもあります。

夢を実現するための第一歩として、この教材をお役立ていただければ幸いです。また、メールによるサポートも しております。ご不明な点は筆者に遠慮なくお尋ねください。

サウスウエスト航空1380便 緊急着陸 航空無線英文日本語訳テキスト+CD

201609

2018年4月24日、サウスウエスト航空(SWA1380)緊急着陸 全交信記録完全日本語化!

201609

201609

商品内容

1.アドバンスドATCコミニュケーションズ テキスト VOL.1(クリアカバーA4サイズ本文27ページ、添付資料4ページ)
2.付録CD(CDR-CDDAフォーマット。約15分)プレーヤーによっては再生できないものもあります。

詳細説明

航空無線(ATC)座学教育用に制作した教材。約15分間の途切れのない交信の記録です。
31ページの冊子に英文のトランスクリプト、日本語対訳および参考図を掲載しています。

201609-02

英文・和訳併記

アメリカ連邦航空局が一般公開した、2018年4月のサウスウエスト航空1380便緊急着陸 前後の交信記録音声ファイルをベースに作成しています。

航空路上を順調に飛行していたSWA1380便は、突然第1エンジンが破壊し、コンプレッサーブレードがエンジンカバーを突き破って飛散します。エンジンが片肺状態になり、胴体は部品が当たったため穴が開き、機内が急減圧した状態となります。

パイロットは、安全な高度まで機体を急降下させつつ、ニューヨーク・センターにコンタクトし緊急事態を宣言します。

SWA1380機がセンターに緊急事態を宣言してから、フィラデルフィア空港へ無事に着陸するまでどのようなドラマがあったのか、また、緊急時におけるパイロットの冷静な判断力とコントローラーの連携プレーをぜひあなたの耳でお確かめください。

201609-01

参考資料付属

CDの内容

トラック1: ARTCC 10R(航空路管制センター・セクター10)
トラック2: ARTCC 10R(航空路管制センター・セクター25)
トラック3: ATCT ℕⅮ DR(フィラデルフィア出発管制・北セクション)
トラック4: ATCT ℕA AR(フィラデルフィア進入管制・北セクション)
トラック5: ATCT LE LC(フィラデルフィア飛行場管制・東セクション)
トラック6: ATCT LW LC(フィラデルフィア飛行場管制・西セクション)

音声データは、上記6施設と航空機の実際の交信を録音・編集したものです。施設ごとに1つのトラックに収録しています。施設間の管制官や消防隊の会話も録音されています。