ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。
今回は、航空機の計器に関する問題です。
例題
- PLT187 PVT
(Refer to figure 5.) A turn coordinator provides an indication of the
A) movement of the aircraft about the yaw and roll axis.
B) angle of bank up to but not exceeding 30°.
C) attitude of the aircraft with reference to the longitudinal axis.
日本語訳
24. PLT187a PVT
(図 5.) 旋回計から得ることのできる情報は、
A) 航空機のヨー軸とロール軸周りの運動
B) 30°を超えない範囲のバンク角
C) 縦軸を基準とした航空機の姿勢
解答
A) 航空機のヨー軸とロール軸周りの運動
解説
ターン・コーディネーターは、ヘディング・インジケーター(DG)や姿勢指示器(ATI)のようにジャイロを使用した計器です。一般的に、DGやATIはエンジンによって駆動されるバキューム・ポンプで発生した負圧によってジャイロを駆動させています。ターン・コーディネーターのジャイロは、電気モーターによって駆動されています。これにより、バキューム・ポンプ系統に不具合があった場合、DGやATIが使用不能になっても作動を続けることが可能です。
ターン・コーディネーターは上図のように、ミニチュア・プレーンと傾斜計で構成されています。例えば、航空機が右旋回するときは、ミニチュア・プレーンも右に傾きます。しかし、ミニチュア・プレーンの傾く角度は、航空機のバンク角と直接の関係はありません。パイロットが急激なバンク操作を行うと、ミニチュア・プレーンの傾きは大きくなります。また、旋回率が大きいとき(小さな半径で旋回するとき)ミニチュア・プレーンの傾きが大きくなります。
傾斜計のボールは、旋回時に中心の位置になるようにラダー・ペダルで調整します。例えば、航空機が右旋回するときは、右にエルロンを切ると同時に、右にラダーペダルを踏みこみますが、踏み込みが足りないと、旋回計のボールは右側に移動します。これを『スリップ』といいます。(図8-22左)逆にペダルの踏み込みが大きすぎると、旋回計のボールは左側に移動します。これを『スキッド』といいます。(図8-22右)
飛行機が右旋回中にスリップすると、搭乗員は右側(旋回中心方向)に傾くように力を受けます。逆にスキッドを起こしている場合、搭乗員は自動車やボートの旋回時のように、左側(旋回中心とは逆の方向)に傾く力を受けます。
旋回中にボールが中心にあるように旋回すると、搭乗員は地上で座っているときのように、右にも左にも傾かずに、ただし、上から押さえつけられるような力を受けます。このような旋回を『釣り合い旋回』(コーディネーテッド・ターン)といいます。(図8-22下)
ターン・コーディネーターのフェース部分の両側には、それぞれ2つの白線によるマーキングがあります。水平飛行時はミニチュア・プレーンの翼端が上側の白線を指しています。これは航空機が旋回率『ゼロ』であることを表しています。
傾斜計のボールを中心に維持しながら、下側のラインにミニチュア・プレーンの翼端が一致するようにして、旋回を行うと、ちょうど2分で360°の旋回を行うことが出来ます。これは一秒につき3°の旋回を行うということであり、『標準率旋回』と呼ばれています。
VFRのパイロットが、飛行中、不意に雲に突入してしまった場合、ターン・コーディネーターを使用して、1分の標準旋回を行うと、180°でUターンすることが可能となり雲から最短で脱出することが出来ます。また、標準率旋回はIFRで飛行する場合はとても重要な基本操作となります。
まとめ
航空機の旋回は、ロール軸まわりの運動とヨー軸まわりの運動が複合されたものです。この2つの運動を可視化してくれる計器がターン・コーディネーターです。姿勢指示器(ATI)のようにバンク角やピッチ角を表示してくれるものではありません。旋回率を表示してくれる計器です。