ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。
今回は、ADFに関する問題その2です。
例題
- PLT014 PVT
(Refer to figure 30, illustration 2.) Determine the approximate heading to intercept the 180° bearing TO the station.
A) 040°
B) 160°
C) 220°
日本語訳
69. PLT014c PVT
(図 30, イラスト 2.) NDB局へ向かう 磁針方位180°のコースにインターセプト(合流)する場合、航空機はどの針路を維持すればよいか
解答
C) 220°
解説
はじめに、図30のADF指示器は、アジマス(方位目盛)が可動式のもので、前回の問題の固定式カード(ゼロが真上に固定されているタイプ)ではないので注意してください。可動式目盛は、(SET)ノブを回して、真上の▼印にコンパスの指示を合わせます。(MH315)
すると、ADF指示器の指針が示している数字(190)が局への方位(MB)となるので、公式(MB=RB+MH)で計算しなくてもMBがすぐに判明します。
そのような訳で、図30から航空機の磁針路は、315と仮定します。
次に、インターセプトという言葉についてお話しします。
インターセプトは、合流するという意味ですが、これはNDB、あるいはVOR局へ向かうコース(TO the Station)と局から離れていくコース(FROM the Station)に対して航空機が合流するということで、コースに対して合流する角度をインターセプト角といいます。
問題の180(TO)のコースは、局へ向かう磁方位180°という意味なので、航空機は局へ向かうコースにインターセプトするという前提です。
インターセプトする角度は、コースに対して90°以下でなければなりません。そうでないと、航空機はインターセプトするまでの間、局に対して遠ざかってしまうからです。
180(TO)のコースの場合、インターセプト角の範囲は090°から270°です。
従って、(A)の040°は範囲外なので不正解です。
(B)の160°の場合、180°(TO)のコースに対し20°の角度をもってインターセプトすることになり、問題ありません。
また、(C)の220°の場合も、コースに対し40°のインターセプト角なので、これも問題ありません。
答えは(B)または(C)となりますが、正解は航空機が180(TO)のコースに対して東側にいるか、西側にいるかによって変わってきます。
自機がコースに対して東側にいるときは、(C)の220°、西側にいるときは(B)の160°が正解となります。
そこで、図30の2の計器の指示を読み取り、コースに対しての自機の位置を調べる必要があります。結論から言うと、現在位置からのMB(局への方位)を調べると、コースに対してどちら側にいるかが分かります。
可動式カードの場合は、指針の指示がMBなので、局への磁方位は(MB to the Station)190となります。
MB190ということは、別の言葉でいうと、自機は現在、190(TO)のコース上にいるということです。よって、自機は、180(TO)のコースに対して10°分左側(東側)のコースにいるということになります。
ここからは、おまけになりますが、インターセプトする角度が大きいほど、コースに対して素早く合流することが出来ます。従って、自機から局への距離が短い場合にインターセプト角を大きく取りますが、ADF指示器の指針の振れが急になるので(レートが高くなる)オーバーシュートしやすくなり、合流の操作が難しくなります。
逆に、インターセプトする角度が小さくなるほど、合流に時間が掛かりますが、指針の振れが穏やかなので、合流の操作が簡単です。
実際の操作では、初期は60°くらいの角度でインターセプトを行い、コースに近づくにつれ、45°、30°とインターセプト角を減らしていきます。そうすると、とてもスムーズにコースへの合流が可能です。これはVORでインターセプトを行う場合も同様です。
最後に、ADFは局への方位を指針が指してくれるので、VORよりも簡単に使えると思いがちですが、実際は上記の公式を使ってMBを求め、風向を考慮してWCAを考慮した針路を計算するなど、VORに比べて使いにくい計器です。
現在は、NDB局も激減しADFは活用する機会が減ってきています。
学科試験問題も、VOR、RNAV、GPSが多くなってきています。