ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。
今回は、固定翼機の安定性に関する問題です。
例題
5. PLT213 PVT
What determines the longitudinal stability of an airplane?
A) The location of the CG with respect to the center of lift.
B) The effectiveness of the horizontal stabilizer, rudder, and rudder trim tab.
C) The relationship of thrust and lift to weight and drag.
日本語訳
5. PLT213a PVT
飛行機の縦方向の安定性は何によって決まるか
A) 揚力(風圧)中心に対する重心の位置
B) 水平安定板、方向舵、方向舵のトリムタブの効き具合
C) 推力と揚力の重量と抗力に対する関係
解答
A) 揚力(風圧)中心に対する重心の位置
解説
多くの飛行機の風圧中心は、飛行機の重心よりも後方の範囲に位置するように設計されていて、揚力が大きくなるほど機首が下がる方向にモーメントが働くようになっています。
同時に、水平安定板には主翼からのダウンウォッシュ(吹きおろし)が働き、飛行機の尾部を下げる力が働きます。低翼機やTテールの飛行機は、水平安定板の取り付け角をマイナスにして対応しています。(図5-23)
これにより、水平飛行中は重心によって機首を下げようとする力と、水平安定板によって尾部を下げようとする力が釣り合って天秤のように安定しています。
いま、飛行機の機首が外力で持ち上がった時、迎え角が大きくなり揚力が増加しますが、重心が風圧中心よりも前にあるため機首下げモーメントが発生して機首が下がります。
逆に重心位置が風圧中心の後方に位置していると、機首が外力により持ち上がった時、迎え角が大きくなり主翼の揚力が増加するため、機首をさらに持ち上げようとするモーメントが働きます。
したがって、重心位置と風圧中心(Center of Lift)の位置関係が、飛行機のピッチ安定に大きな影響を及ぼすと言えるのです。
飛行機の安定性とは
飛行機が釣り合いの取れた状態を邪魔するような力を受けた時、姿勢を元の状態に戻し最初の釣り合いが取れた状態に戻って飛行を続ける能力。
安定性の種類
静安定(Static Stability)
正の静安定 力を受けたときに元の状態に戻ろうとする。(上図左)
中立の静安定 力を受けたときに変化した状態を維持する。(上図中)
負の静安定 力を受けたとき元の状態から更に離れていく。(上図右)
動安定(Dynamic Stability)
正の動安定 振幅が減衰する
中立の動安定 振幅が変化しない
負の動安定 振幅が増大する
縦安定(Longitudinal Stability)
ピッチ軸(Lateral Axis)まわりの安定性のことで、重心位置に対する水平尾翼の位置、水平尾翼の面積などが影響を与える。
横安定(Lateral Stability)
ロール軸(Longitudinal Axis)まわりの安定性のことで、主翼の上反角、後退角、および主翼の取り付け位置(キール効果:重心に対して主翼が上にあるか下にあるか)が影響を与える。
方向安定(Vertical Stability)
ヨー軸(Vertical Axis )まわりの安定性のことで、重心より後ろの胴体側面積・垂直尾翼の位置および面積が影響を与える。
まとめ
一般的な飛行機が水平飛行中は、正の静安定かつ正の動安定の性格を持たせています。これは、トリムを取ってあれば、手放しで飛行が出来ることを意味します。
練習機としてポピュラーなセスナ152は、旋回時の横安定においては、少ないバンク角では正の静安定、一定のバンク角では中立の静安定、それよりバンク角が増加すると負の静安定になっています。このため、あるバンク角までは飛行機が自分で復元しようとしますが、バンク角が増加するほど復元力は低下し、最後には反対にエルロンを当てないとバンク角を維持することが出来なくなります。
今回は縦安定に焦点を当てましたが、横安定や方向安定についても調べておきましょう。