ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。
今回は、ヘリコプターの振動に関する問題です。
例題
- PLT472 PVT
While in level cruising flight in a helicopter, a pilot experiences low-frequency vibrations (100 to 400 cycles per minute). These vibrations are normally associated with the
A) engine.
B) cooling fan.
C) main rotor.
日本語訳
251. PLT472c PVT
ヘリコプターで水平巡航中、操縦士が低周波振動(1分当たりの振動が100 から 400回)を感じた。この振動の発生源は、
A) エンジン
B) 冷却ファン
C) メインローター
解答
C) メインローター
解説
ヘリコプターは多かれ少なかれ振動がつきものです。エンジン、トランスミッション、ドライブシャフト、メインローター、テイルローターなど回転部のアンバランスやローターのトラッキング不良(各ローターの先端部が異なる位置を通過する)などで振動が発生します。
振動は乗員に不快感をもたらすだけでなく、リベットのゆるみ、金属疲労による亀裂やベアリング部の摩耗、損傷が早期に発生してしまいます。
ヘリコプターの回転部分で一番高速回転しているのはエンジンで、レシプロエンジンの場合、毎分2,000回転(2.000rpm)以上です。
エンジンの回転は減速機(トランスミッション)に伝達され、メインローターとテイルローターに減速されて出力されます。
通常、メインローターへの回転は、減速機により(100-500rpm)に減速されます。
テイルローターへの回転は、減速機により(1,000-2,000rpm)に減速されます。
したがって、ヘリコプターの各部回転数は、エンジン→テイルローター→メインローターの順に低くなっています。
レシプロエンジン(ピストンエンジン)の場合、構造上ある程度の振動が発生するのが普通ですが、スパークプラグの一つが点火不良を起こしたり、点火時期の不良、気化器凍結やミクスチャーのコントロール不良があると、毎分2,000回以上の振動が発生します。これをHigh Frequency Vibrations(高周波振動)と呼んでいます。
タービンエンジンの場合、回転数が高いため異常振動があっても体感することが難しいと言われています。
トランスミッションのテイルローター側伝達経路からテイルローター上でアンバランスが発生した時、毎分1,000-2,000回の振動が発生します。これをMedium Frequency Vibrations(中間周波振動)と呼んでいます。
この振動の原因は、トランスミッションのテイルローター側伝達経路のアンバランス、冷却ファン(テイルロータードライブシャフトからVベルトを介して回転する)、テイルローター左右の重さの違いによるアンバランス、各テイルローターの重量分布の違いによるアンバランス(ダイナミックアンバランス)そしてテイルローターのトラッキングのずれなどがあります。
パイロットは、アンチトルクペダルから足に振動が伝わることで体感することが出来ます。これは、ほとんどのヘリコプターにおいて、ペダルのコントロールに油圧機構が無いため、振動がダイレクトに伝わるためです。
トランスミッションのメインローター側への伝達経路からメインローター上でアンバランスが発生した時、毎分100-500回の振動が発生します。これをLow Frequency Vibrations(低周波振動)と呼んでいます。
この振動の原因は、トランスミッションのメインローター側への伝達経路上のアンバランス、メインローターのアンバランスおよびトラッキングの不良などがあります。
パイロットは、サイクリックピッチコントロールや機体が小刻みに揺れたり、体が前後左右に揺すられることで体感することが出来ます。
結論
日ごろから、ヘリコプターの正常な状態の振動を覚えておくことが大切です。異常な振動を感じたときはそのまま放置しないで、出来るだけ速やかに予防着陸を行い、整備士に伝えてください。その時にどのような振動であったかを説明することで、故障の原因探求の助けになります。