ここでは、FAA自家用操縦士学科試験問題の中から、質問の多い問題を解説しています。
今回は、ヘリコプター工学の問題です。
例題
91.PLT259 PVT
Ground resonance is most likely to develop when
A) on the ground and harmonic vibrations develop between the main and tail rotors. B) a series of shocks causes the rotor system to become unbalanced.
C) there is a combination of a decrease in the angle of attack on the advancing blade and an increase in the angle of attack on the retreating blade.
グランドレゾナンス(地上共振)はどのようなときに最も起こりやすいかという質問です。
予備知識
全関節型ローターヘッドシステム(Fully Articulated Rotor System):ローターヘッドに対して、ローターが上下(フラッピング)前後(リードラグ)に動くことが出来る関節(ヒンジ)を設けているもので、3ブレード以上のメインローターを持つヘリコプターに採用されているものがある。(ヒューズ269シリーズなど)
Advancing (Retreating) Blade :ヘリコプターが前進飛行中、相対風(Relative Wind)を受ける側(風上側)のローターブレードを、前進側のブレード(Advancing Blade)といい、風下側のローターブレードを後退側のブレード(Retreating Blade)という。ヘリコプターを上から見て左回転のローターシステムでは、進行方向右側に位置するローターブレードがAdvancing Bladeとなる。
地上共振(Ground Resonance)とは?
地上共振は離着陸時にヘリコプターの降着装置が地面に何回か続けて接触した際に、その衝撃がローターシステムに伝わり、ローターヘッドに対するローターの位置が不均衡になるために振動が発生し、胴体の固有振動数とローターの振動が一致して共振を起こします。
全関節型ローターシステムを装備したヘリコプターは、リード・ラグ・ヒンジ(ローターヘッドに対してローターが前後方向に動くことを許容する関節)が装備されており、外部の力が加わった場合にそれぞれのローターの位置が幾何学的な不均衡となり振動が発生します。
ティータリング式やリジッド式ローターシステムを採用しているヘリコプターでは、リード・ラグ・ヒンジがないので地上共振は起こりません。
また、降着装置に車輪式を採用しているヘリコプターの方が、スキッド式よりも地上共振が発生しやすいとされています。
地上共振が起こると、ヘリコプターは短い時間(数十秒程度)で自己破壊を起こしてしまいます。
パイロットは、地上共振の発生を感じた場合、ローター回転数が高く(通常の運用範囲内・100パーセント前後)離陸が可能な場合は、すぐに浮上して空中にとどまることでリカバリーすることが出来ます。
ローター回転数が低く離陸できない場合は、スロットルを閉じ、コレクティブ・レバーを完全に下げてヘリコプターを完全に接地することにより振動を減衰させることが出来ます。
問題の解説
選択肢Aは、”メインローターとテールローター間に共振が発生して”とあるので間違いです。地上共振は、メインローターで発生した振動が胴体と共振して起こります。
選択肢Cの、”前進側のローターブレードの迎角が減少し、後退側のローターブレードの迎角が増加する”は、ヘリコプターが前進飛行中は普通に起こっている現象です。後退翼失速の説明にも使われます。
解答はBの、”連続したショックが原因となって、ローターシステムにアンバランスが生じる”です。